【けものフレンズ】たつき監督降板騒動について裏方が考察する
※この記事は10分でわかるアニメの権利関係のお話です。
2017年はアニメ業界いろいろありますね。
ここ数日話題になっている、けものフレンズ騒動について、
部外者ながらちょっと整理をしてみたいと思います。
アニメの映像をみると、けものフレンズはたつき監督とヤオヨロズの想いの詰まった素晴らしい作品である、という印象が強いです。
ですが、スタッフ欄を見ると、権利関係はけものフレンズ=たつき監督(ヤオヨロズ)ではないことがわかります。
まず委員会の座組みからみていきますと、
以下がWikipediaにあるスタッフ欄の構成です。
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★スタッフ
原作 - けものフレンズプロジェクト[注 8]
コンセプトデザイン[注 1] - 吉崎観音
監督・シリーズ構成・脚本[注 2]・コンテ・演出 - たつき
キャラクターデザイン・モデリング - irodori[29][注 9]
作画監督 - 伊佐佳久
美術監督 - 白水優子
撮影監督 - 石山智之
音響監督 - 阿部信行
音楽 - 立山秋航[注 10]
音楽プロデューサー - 内田峻
音楽制作 - ビクターエンタテインメント
プロデューサー - 細谷伸之、岡本泰幸、清水美佳、福田聡、秋尾浩史、石垣吉彦、工藤大丈、塩田友、和泉勇一、福田順
アニメーションプロデューサー - 福原慶匡
アニメーション制作 - ヤオヨロズ
製作 - けものフレンズプロジェクトA
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まず、一番下の「製作 - けものフレンズプロジェクトA」部分ですが、
これは「けものフレンズ」が「けものフレンズプロジェクトA」の著作物であるということを表します。
参考:けものフレンズプロジェクトとは (ケモノフレンズプロジェクトとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
リンク先をみると、けものフレンズプロジェクトは13社(多い!)の出資によって成り立っていることがわかります。
つまりけものフレンズは、この13社が共同で保有するIP(著作物)だという点をまずは念頭に置く必要があります。
次に、たつき監督とヤオヨロズの立ち位置ですが、
たつき監督は「監督・シリーズ構成・脚本・コンテ・演出」 とあります。
また、ヤオヨロズは「アニメーション制作」です。
これはどういうことかというと、一般的な委員会形式であれば、
委員会→(発注)→制作会社
委員会←(納品)←制作会社
という図式が成り立ちます。
つまり、あくまで制作会社は委員会(クライアント)の発注により映像やら物語やらを作り、納品するという立ち位置であり、
作品自体の著作権は委員会に帰属します。
「監督・シリーズ構成・脚本・コンテ・演出」は、
たつき監督がヤオヨロズ内のスタッフであり、作品にとって監督やシリーズ構成などは重要な要素なので、各担当クリエイターにスポットライトを当てます、という意味です。
これらを踏まえてKADOKAWAの声明を見ると、全容がわかると思います。
KADOKAWAの主張には、制作会社による共有のない作品利用があった、とあります。
これはおそらく12.1話「ばすてき」のことだと思いますが、
権利を持たない制作会社が、委員会に何の情報共有もなく、動画サイトに本編に近い映像をアップロードしてしまったということ最大の問題なのではないでしょうか。
(本来、情報共有をすればいいというものでもありません。一般的に、アニメの制作契約では成果物はすべて委員会に帰属する為、そのコントロールは委員会が行うためです。)
こういうと、この12.1話はたつき監督の自主制作(同人)ではないか、という指摘もあるかもしれませんが、ほぼその可能性はないです。
その理由としては、12.1話にキャストのボイスが入っている、ストーリーが12話の中の話であるなど、個人的に新規に映像を作成したというよりは、
12話の制作途中に含まれていたが、放送時間の関係でカットされたパートだとみるのが自然だからです。
委員会としては当然、自分たちの著作物を勝手に公開されたわけですから、
権利を侵害されているだけでなくプロモーションプランも狂います。
ヤオヨロズに対して、委員会から意見を申し立てるのは至極まっとうなことです。
現在インターネット上ではKADOKAWAを叩く意見が非常に多いですが、
私は(というかアニメのことを知っている人であれば)このKADOKAWAの声明は非常に丸い、大人な対応だと考えています。
委員会内ではおそらく、作品も売れているし、上記のような制作会社の暴走のようなことをやめてくれれば2期も一緒にやりましょうよ、というような空気だったのではないでしょうか。
それに対してヤオヨロズがそれはのめない、と返したのであれば、
けものフレンズプロジェクトを続けていくためにはヤオヨロズから別の制作会社に変更するしかありません。
私も正直たつき監督のいないけものフレンズはけものフレンズたりえないと思いますが、
上記のような事情であれば非常に納得できるなと思った次第です。
クリエイターさんたちは、自分たちの命を削って時に素晴らしい作品を生み出します。
ただ、今回のヤオヨロズのように外側がしっかりしている会社でないと、
クリエイターの論理でものを考えてしまうことが往々にしてあります。
また、一般の方はこういった舞台裏を知らず、知る必要もないので、
なにかあると普段から顔の見えるクリエイターに同情しがちな傾向があります。
今回のことに関しても、どちらか一方が悪という話ではおそらくないので、
なるべく公平にものを見るとともに、いい着地になることを願います。
お互い譲歩できる着地としては、以下かなと個人的には思います。
・2期の制作会社はヤオヨロズに戻す
・ヤオヨロズは無断で作品を使用しない
・原作を「けものフレンズプロジェクト」→たつき/ヤオヨロズに変更して、たつき監督には原作者として作品のコントロールに関わってもらう