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AbemaTVは次世代の放送局となるか

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ハッピーハロウィン!

 

遅ればせながら先週末はハロウィンでしたね。

我々の界隈としては池袋ハロウィン、略して池ハロもだんだん定着してきた感があります。

 

そんな楽しいニュースであふれる中、サイバーエージェントの決算報告が話題を呼んでますね。

 

www.itmedia.co.jp

少し引用します。

 

サイバーエージェントが2016年9月期(15年10月~16年9月)の通期決算を発表。

インターネット広告事業とゲーム事業が好調で、売上高3106億円(前期比22.1%増)、営業利益も367億円(12.3%増)と、ともに過去最高を更新。

AbemaTVへの投資がかさみ、メディア事業は、売上高219億円(6.0%減)、営業損益は83億円の赤字(前年同期は2.9億円の赤字)。

今後は収益性の向上を目指す。

 

ということで、おそらく大方の予想通りAbemaTVが大赤字とのことでした。

 

これはもう委員会サイドにいる人間なら何も不思議に思うことはありませんが、ブログなどを巡っていると今後の収益化するから大丈夫でしょ、といった声もあるようです。

 

個人的にはAbemaTVの黒字化は難しいと考えていますので、本日はAbemaTVのアニメサイドからの評価と、今後の継続性・発展性について書いてみたいと思います。

 

 

まず、委員会からはAbemaTVがどのように評価されているのかですが、結論から言うと非常に好評です。

 

これには大きく下記の理由があります。

 

  1. UIが綺麗なので、アニメにとってマイナスプロモーションにならない
  2. 録画ができないので、BDの売り上げに影響しない
  3. 番販の価格が非常に高い

 

このうち、今回の決算にかかわるものが3番目の番販の部分です。

 

アニメの仕組み自体はまた改めて解説しますが、簡単に言うとどんなアニメを放送するのにも、基本的には番販費というものを委員会に対して払う必要があります。

 

つまり、AbemaTVはアニメを1作品ずつ購入して、自社の媒体で放送をしているのです。

 

現在AbemaTVには複数のチャンネルがあり、ほとんど24時間アニメが流れています。

これを埋めるためのコンテンツを集めるだけでも多額の予算が必要となります。

 

番販費は新作であれば1話あたり数十万、数年前のアニメでもでも数万円はかかります。

これが積もりに積もると番組の調達に数億~数十億という規模になるのです。

 

もちろん、サイバー側にはこれだけの投資をした狙いがあるわけです。

まずは収益を度外視してユーザーを集め、あとからマネタイズを行う。

この発想は海外も含めて主流になってきています。

 

ただ、個人的な意見としては、AbemaTVは今後黒字化することなく、

数年後には配信事業から撤退していると考えています。

 

その理由は大きく分けて下記の2つです。

  1. テレビCMからWEB広告への移行はゆるやかであること
  2. リアルタイム視聴が時代にそぐわないこと

 

順に解説します。

 

まず、1の宣伝媒体の移行からです。

AbemaTVの取りうる今後の収益化手段は、テレビCMのような番組間の動画広告が考えられます。

 

この場合、テレビと同じようにCM枠のセールスをしていかなければなりませんが、

日系企業の多くはテレビCMからWEBの動画広告へと予算のシフトができていません。

 

YouTubeをはじめとして、徐々にWEBの動画広告も増大していますが、

諸外国に比べると大企業ほどテレビCMに予算が割かれているのが現状です。

 

AbemaTVはWEB媒体となりますので、

長年続くテレビCMの予算を、そう簡単には引きはがせないのが現状というところです。

これはスポンサーとテレビ局(広告代理店)とのお付き合いという意味合いも含まれます。

また、企業内で宣伝予算を握っている部長クラスの人材はテレビ全盛期を経験している方が多く、心理的にもテレビからWEBへの移行が緩やかにならざるを得ません。

 

次に、2つ目のリアルタイム視聴についてです。

AbemaTVはWEB媒体でありながら、リアルタイムでの視聴を強制するメディアです。

 

WEB媒体での配信といえばバンダイチャンネルニコニコ動画など、

月額制での、視聴者が好きな時に見ることが可能というスキームが主流です。

 

 しかし、AbemaTVはリアルタイム視聴を選びました。

これはおそらく「WEB上でテレビを再現する」というAbemaTVのコンセプトからすると自然な発想となりますが、ここが一番の問題だと考えます。

 

つまり、リアルタイム視聴とは「テレビが生活の中心にあり、視聴者はそれに合わせるべき」というデジタル出現以前の発想なのです。

 

この発想はある程度テレビの視聴習慣が残っている30代以降には受け入れられるかもしれません。

しかし、デジタルネイティブである層、生まれた時からWEBが身近にあり、テレビが生活の中心でなかった層からすると違和感のある考え方です。

 

WEBの媒体はいつでも好きな時に好きなだけ見ることができるという特徴がWEBの媒体たるゆえんだと個人的には考えています。

 

このような小さな違和感は、長く使用するにつれ必ず心理的な負担となります。

このため、DL数が伸びてもDAUが頭打ちになり、減少に転じる日が近いうちにやってくると考えています。

 

1つ目の要因は、これから5年10年と現状のペースで運営を続けることができれば解決します。

しかし、2つ目の要因により、AbemaTVが昔のテレビのように視聴習慣を形成し、テレビと同様の予算を獲得することが可能な媒体に成長するかというと不明瞭です。

 

DAUで試金石となるのは、今後AbemaTVはCMからのアプリインストールやWEBサイトへの導入機能を開発すると思われますが、そのCPIが満足のいく数値であるかという部分です。

 

また、藤田社長は最初の3年は赤字でいいと発言されていますが、3年といわずコンテンツを集め続けられるか、継続的なリアルタイムでの視聴習慣をつくっていけるかが中期的な課題となるかと思います。

 

上記はとても難しく、4年目以降の黒字化のめどが立たない場合、撤退するのではないかというのが個人的な意見です。